夕陽が沈み、しばらくすると、海面が黄金色と鉛色の中間色のような、とても不思議な色合いに輝きはじめた。それは長くは続かなかったけど、錬金術の最後の工程を暗示させるような、つかみどころのない、現実と非現実の境界線、とても軽薄な状態を示唆していた。カメラに撮ろうとしたら、それは画像素子に記録されることはなかった。
先日、僕の大好きな映画「シェルブールの雨傘」のデジタルリマスター版を観る機会があった。何度も見たことがある映画なのに、そのときこれまで一度も気に留めなかったある事実に気が付いた。映画の中にやたらと自転車が登場するのだ。1950年代後半という時代背景もあるけど、それにしても自転車が単なる小道具以上の存在感を放っている。監督のジャック・ドゥミが生きていたらこう聞いてみたい、「君は自転車がそんなに好きだったのか?」と。
そんな話をヴェロクラブ一の紳士K氏に話したら、彼はこの映画で至高の音楽を創造した作曲家ミシェル・ルグランのファンだという。僕もルグランの大ファンである。だったら、ヴェロクラブで「シェルブールの雨傘」の鑑賞会を開くしかないよな。自転車とルグランがここで繋がった。:-)
知人で戦地で一緒に戦った同士でもあるK君が、素晴らしい本をリリースした。
オリジナルの英語版著者は長い尻尾を持つクリス・アンダーソン。邦訳を出すだけでも素晴らしいのに、K君はこの中身を先着1万人に「無料」であげちゃうと言うんだから、痛快な話だ。
きっと今頃K君はワイン片手に不敵な笑みを浮かべているに違いない…。
最初にお断りしておくと、以下の記述は東京・丸の内で2009年10月1日から11月30日まで開催中のコミュニティサイクル社会実験の現場をたまたま通りかかった野次馬の視点でレポートしたただの“インプレッション”記事です:
(前回からの続き)私たち「ヴェロクラブ」メンバーはまず、平日の昼過ぎに東京・丸の内大手町ビルにあるJTB丸の内支店を訪れた。ウエブで読んだ情報によると、ここともう一つ、有楽町のJTBオフィスの2カ所でのみ「ユーザー登録」ができる、ということだった。
調査隊は大手町のほうの「エントリーポイント」にまずアクセスすることにした。しかし、これがまた分かりにくいところにある。登録場所は、要するに JTBさんの営業所の中にあったのだが、変な幻想を抱いていた私たちは、オシャレな登録用KIOSKのようなものが Registration という看板とともに街中に立っていることを想像していたものだから、なかなか目的地にたどり着けない。結局、くだんのJTB営業所内の旅行受付カウンター にたどり着くと、デスクの横に2種類のパンフレットと登録用紙一式がとっても地味に置いてあったのだった。
でも、よく考えてみたら、タイムトラベラーになって未来の東京にワープしてみると、この種のサービスが一般に普及した社会では、コミュニティサイクルの登録・申込窓口は多分コンビニのレジや郵便局のカウンターだったりするわけで、上記のシーンも“未来眼鏡”を通して見れば、ちっとも不自然ではない。 続きを読む »
実は最近、地元の仲間達と自転車同好会を結成してしまった。その名も「湘南ヴェロクラブ」である。休日は自転車三昧、平日でも通勤手段として天気さえ良ければ最寄りの駅まで自転車で通っている。と言いたいところだが、実際にはそんなにしょっちゅう乗っていなかったりする。
というのも、出先での駐輪スペースの問題や気持ちよく自転車が走れる道があるようでない、といった些細だが「その気」が萎えるような理由が多々あって、なかなか「自転車で出かけよう!」という気持ちにならないのだ。
週末の湘南などは自転車乗りには天国なはずなのだが、どうしてか、あの「ウキウキ」感がない。かつてベルリンに住んでいたときには自転車中毒者だったこの私が、である。
結局、日本における自転車の位置づけは、歩行者以上、自動車未満、その存在は幽霊のようであり、交通法規上は存在していても、その適用が至極あいまいなため、どうにもつかみどころがない。とにかく中途半端な存在なのだ。最近自転車が若者から団塊ピープルまで全国的なブームになっているが、ロードレーサーが売れようと、ブレーキ無しのピストが街を滑走しようと、それらはしょせんはママチャリの亜種であり、放置自転車の山が無惨にも駅前に累々と積み上げられている、自転車にはそのようなイメージしかない。
なんだか,「セッティング」が全然楽しくないのだ。
とはいえ、そんな日本でも、コミュニティや社会システムの中における自転車の役割を論じたり「自転車に自由を!」などと声高に叫ぶことが、以前よりは不自然じゃない時代になったんじゃなかろうか。自転車市民権宣言なんてものを主張する人々も出てきているくらいだ。
例えばパリのコミュニティサイクル・プロジェクトとして、世界的にその成功が注目されているヴェリブ Vélib’ 。最近、日本でもヴェリブがいたるところで話題に上るようになっている。Google で検索してみ欲しい。いくらでもサイトが出てくる。
このようなムードを反映してか、折しも、先月から11月30日までの2ヶ月間にわたり東京・丸の内でJTBが「コミュニティサイクル社会実験」と称してレンタサイクルのパイロットプロジェクトを実施している。そこで、わが湘南ヴェロクラブ調査隊が野次馬根性で現場を視察してきたのだった。(続く)
前夜には木枯らし一号が吹き荒れたものの、一転して好天に恵まれたこの日。ただ気温は低く、肌寒いを通り越して、身震いするような冷風が上着の首の隙間から容赦なく吹き込む。文化の日で祝日ということもあり、太陽が西方に沈む頃になると大勢の夕陽族たちが片瀬西浜には集結していた。
日没時刻は16時45分。16時過ぎには空気が澄んでいるためか鮮やかな群青色に映える海面に“黄金の帯”が出現。サーファーたちが黄金色の慈悲に包まれて黄金の羊の群れに変身する時間帯だ。
太陽はシルエットとなった伊豆半島の山塊越しに沈んでいく。
光線は黄金色から濃い赤色へ徐々に変化していく。それに伴い、空の色は白を中間に青と赤のグラデーションを生み出す。この中間色としての“白”が、畏怖の感覚を呼び起こすほど、この上もなく美しい。宇宙の果てを瞥見させるようなボイド・カラーだ。
やがて、夕陽は深紅色を纏い、西の彼方に悠然と姿を消す。
宇宙スケールのメカニズムの荘厳さに、心を打たれる。なんとなめらかな、何事にも微塵の影響も受けない着実な動きだろうか。思わずストレートシックス・エンジンのシルキーな回転を連想する。もちろん、比べようもないのだが…。